第3話 朝の光とトーストと、始まりの気持ち

トースターの中で、パンが少しずつ色づいていく。
その間に、カーテン越しの光が机の上をやわらかく照らす。
バターをナイフでゆっくりとすくいながら、
今日の空気を胸いっぱいに吸い込む。

――カリッ。

小さな音が、朝の静けさをほどよく区切る。
焼きたてのトーストを取り出すと、
立ち上る香ばしい香りが部屋の中に広がった。

コーヒーを淹れると、
その香りがパンの匂いと混ざり合い、
まるで“朝の合図”のように心を整えてくれる。

昨日までの慌ただしさや、
やり残したことも、
この瞬間だけは遠くに感じる。

ひと口目をかじると、
あたたかさがじんわりと広がっていく。
バターの塩気と、パンの甘さ。
それだけで、少し元気になれる気がした。

「今日も、たぶん大丈夫。」
そんな小さな言葉が、
自然と胸の中に浮かぶ。

朝ごはんというのは、
体を満たすだけじゃなく、
心のエンジンを静かにかける時間なのかもしれない。

食べ終えて、ふと窓の外を見ると、
光が少し強くなっていた。
新しい一日が、もう動き始めている。

トーストの皿を片づけながら、
小さく深呼吸をひとつ。
この穏やかな始まりが、
きっと今日をやさしく包んでくれる。

――朝の光とトーストと、始まりの気持ち。
そんな小さな組み合わせが、
思っている以上に、人生を温めてくれるのだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました