トースターの中で、パンが少しずつ色づいていく。
その間に、カーテン越しの光が机の上をやわらかく照らす。
バターをナイフでゆっくりとすくいながら、
今日の空気を胸いっぱいに吸い込む。
――カリッ。
小さな音が、朝の静けさをほどよく区切る。
焼きたてのトーストを取り出すと、
立ち上る香ばしい香りが部屋の中に広がった。
コーヒーを淹れると、
その香りがパンの匂いと混ざり合い、
まるで“朝の合図”のように心を整えてくれる。
昨日までの慌ただしさや、
やり残したことも、
この瞬間だけは遠くに感じる。
ひと口目をかじると、
あたたかさがじんわりと広がっていく。
バターの塩気と、パンの甘さ。
それだけで、少し元気になれる気がした。
「今日も、たぶん大丈夫。」
そんな小さな言葉が、
自然と胸の中に浮かぶ。
朝ごはんというのは、
体を満たすだけじゃなく、
心のエンジンを静かにかける時間なのかもしれない。
食べ終えて、ふと窓の外を見ると、
光が少し強くなっていた。
新しい一日が、もう動き始めている。
トーストの皿を片づけながら、
小さく深呼吸をひとつ。
この穏やかな始まりが、
きっと今日をやさしく包んでくれる。
――朝の光とトーストと、始まりの気持ち。
そんな小さな組み合わせが、
思っている以上に、人生を温めてくれるのだ。

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