第2話 小雨の小さな音楽隊と出会う

窓の外から、かすかな音が聞こえた。
トン、トン、と屋根を叩くリズム。
朝の空気の中で、それはまるで小さな音楽隊のようだった。

目を覚ますと、外は薄い灰色の光に包まれていた。
少し冷たい空気。
カーテンの隙間から見える雫の列が、
一定のリズムで静かに踊っている。

カップにお湯を注ぐ音と、
窓を打つ雨の音が重なる。
まるで朝だけに許された小さな演奏会のようで、
私はその音たちに耳を傾ける。

傘の上で軽く跳ねる音、
道の水たまりに落ちる柔らかな音、
遠くで車が水を切る音。
それぞれが違う楽器のように響いて、
外の世界を静かに満たしていく。

不思議と、心は穏やかだった。
晴れの日の明るさとは違う、
“曇りの日だけの優しさ”がそこにある。
焦らずに過ごしていいよと、
雨がそっと教えてくれている気がした。

朝の時間は、いつもよりゆっくり流れていく。
カップを両手で包みながら、
雨音のリズムに呼吸を合わせる。
それだけで、少しだけ世界と仲良くなれたような気がした。

外へ出ることのない静かな朝。
けれど、耳を澄ませばこんなにも豊かな音がある。
今日という日も、静かに始まっていく。

――小雨の小さな音楽隊が奏でる旋律を、
心の奥でそっと口ずさみながら。

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