第1話 朝の光がカーテンを透けるころ

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目を開けた瞬間、
やわらかな光がカーテンを透けて、部屋の中にすべり込んでいた。
白い布を通って広がるその光は、
まるで世界がそっと息を吸い込むような静けさをまとっている。

まだ人の気配の少ない時間。
時計の針の音さえ、少しだけゆっくりに聞こえる。
そんな朝が、私は好きだ。

布団の中で、しばらくその光を眺める。
「今日も一日が始まる」
その当たり前のことが、不思議とあたたかく感じられる。

カーテンを少しだけ開けると、
空の青と雲の白が、まだ混ざり合っている。
鳥の声が遠くから響き、
窓辺の植物がうっすらと揺れていた。

まだ頭の中は半分夢の中。
けれど、その曖昧な時間こそが、
一日の中でいちばん穏やかな瞬間なのかもしれない。

顔を洗い、鏡の前に立つ。
冷たい水の感触が肌に触れるたび、
少しずつ「今」に戻ってくる。
その感覚が、私は好きだ。

朝の光の中では、
どんな昨日もいったん白紙になる気がする。
新しいページが、静かに開く。

大きなことをしなくてもいい。
ただ、光を感じて、
深呼吸をひとつ。
それだけで、
今日という日が少しだけ優しく見える。

――カーテンを透ける光の向こうで、
世界がゆっくりと目を覚ましていく。
そのリズムに合わせるように、
私の一日もそっと始まった。

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